総監督ノート

~学生自転車競技のコーチングメモ~

インカレ2025:ロードレース総括

前回のトラック総括に続き(と言いつつやや時間が空いてしまったが)、全日本大学対抗選手権自転車競技大会(インカレ)のロードレースについて振り返り、当校の課題を整理したい。

今年のインカレロードレースは、9月6日(土)~7日(日)に、群馬サイクルスポーツセンター6kmサーキットを舞台として、一日目に女子(72km)、二日目に男子(150km)が開催された。

快晴の下 スタートする選手達(Photo by 深井文浩様)

<目次>

トラック結果を踏まえたレース展開予測

インカレロードが通常のロードレースと異なるのは、「大学対抗戦のうちの一種目」という位置付けである点だ。トラックの個々の種目よりも配点が多かったり(1位=14点、トラックは9点)、20位まで対抗得点が与えられたり(トラックは8位まで)という違いはあるものの、あくまで総合成績を構成する種目のひとつ。つまり、トラック3日間が終わっての総合成績の途中経過によって、各校の取るべき戦略・戦術が変わって来るということになる。

トラック競技終了時点での総合順位・得点は、以下のような状況だった:

トラック3日間を終えた時点での総合順位表(学連コミュニケより)

上記を踏まえると、例えば以下のような戦略が考えられる:
●1位・日大は2位に35点もの大差を得ているので、横綱相撲。純粋に勝利者を出すことを目指し、豊富な戦力を用いてレースを支配するだろう。
●2位~4位はロードレース次第で順位変動のあり得る得点差なので、中央・鹿屋・京産の各校は(日大の動きも注視しつつ)お互いをよりマークし合い、点差を離すまたは逆転を狙いに行くだろう。特に京産大は、今季の全日本選手権U23チャンピオンを含め、ロードに強い選手を多数擁している。
●総合8位(入賞ライン)を巡る争いも、明治・日体・順天堂・立命館・朝日の5校を中心にまだ流動的であり、各校エース級を上位に送り込む動きが見られるだろう。
●その他、当校を含む総合入賞圏外の各校や、トラックには出場していないチームからも、ロードの強い選手が単騎で活躍する可能性がある。

こうした仮説を思い巡らせながら、当校としてはトラックでの目標ショートを少しでもロードで挽回すべく、複数名を上位に入れること(10位以内に1名、20位以内に1名)を目標とした。スタートラインには8名が並んだが、これは1校当り出場枠の上限値であり、出場権を持つ選手がそれだけ揃ったという意味で、当校としては久しぶりのことだった。うち3名が1年生で、インカレロードのような本格レースは初めてという部員もおり、どのような走りをしてくれるか楽しみであった。

実際のレース展開と当校結果

6kmサーキットを25周する150kmのレースは午前9:00にスタート。標高900mに位置する群馬CSCとはいえ、強い陽射しと高い湿度の中での戦いとなった。

序盤に早くも6名の逃げが形成され、そのメンバーは日大・中央・鹿屋・京産・法政・明治という有力校から各1名ずつの構成となった。そうなると後続のメイン集団を積極的に牽引するチームが乏しく、逃げと集団とのタイム差はみるみる2分30秒ほどまで広がる。先頭は1周9分ちょうど前後のペースを淡々と刻み、集団は9分30秒程度のゆったりしたペースで進む。このままいくと、後半になって各校エース級が動くのを待つ展開が予想された。
8名を投入していながら逃げに誰も乗っていない当校は、本来であれば集団を牽引すべき立場であった。しかし残念ながらそこまで戦力が揃ってはおらず、あくまで最後まで1名でも多く残ってチャンスをつかむ戦略に抑えた。ただし本来は、タイム差が開けば開くほど、また残り距離が少なくなればなるほど、追走の際のスピードひいてはパワーの高さが要求される。当校としては安全圏内に集団を留めておく追走力をチームとして具備し、勝負所でのダメージを最小化したいところではあった。

レース中盤、12~13周目になり、先頭6名がバラけ始めた。一方メイン集団はペースが上がったり下がったりと落ち着かず、逃げとのタイム差は最大で約4分まで開いた周もあった。
14~15周目になり、集団から8~9名の追走が出来るなどいよいよレースが活性化し始めた。これ以降はメイン集団のペースも上がり、毎周8分30秒~40秒近辺で推移した。17周目に逃げていたメンバーが全て吸収されレースは振り出しに。この辺りで当校選手が一人また一人と集団から脱落していき、20周目に入ったところで、約50名に絞られたメイン集団に残っているのは中谷(3年)のみとなってしまった。

レースは終盤、日大・中央・明治・立命館の各エースによる4名の逃げが決まり、さらにゴール直前に東京都市大と順天堂の選手がブリッジして追い付き、6名でのスプリント勝負となった。それを力強いモガキで制したのは佐藤后嶺選手(中央大2年)だった。
当校は中谷が先頭から1分57秒遅れのメイン集団(12位集団)後方でゴールし、31位であった。この集団の前方なら20位までの得点獲得もあり得たわけだが、「もうその脚は残っていなかった」(本人談)。
出走147名のうち完走者は43名(メイン集団からおよそ1分遅れるとレースから除外されるため、持久力や精神力に関わらず完走者は少なくなる)、完走率29%のレースとなった。

当校の今後の課題

上述した展開を分析すると、このサーキットにおける「9分~9分30秒」(平均時速約38~40km/h)のペースなら当部メンバーは付いて行けるが、「8分台半ば」(同約42km/h)に入ると耐えられない、という傾向が明確に出た。このタイムの狭間のどこかに、我々がまだ超えられていない「谷」があり、それを克服しなくてはならない。
レース後のミーティングでも言ったことだが、当校の中でレースを最も長く走った中谷や長谷川(3年)が、その走行ログを解析し、要求されたパワーレベルのどの辺りに我々の「死の谷」があったかを明らかにして、それを今後の練習メニューに反映させて欲しい。「誰々は1分のパワーが高いんで、いけると思います」といった部内での比較論や個人の得意不得意ではなく、客観的に我々の実力を直視出来る、良い機会となるだろう。

戦績だけで見ると、昨年の同大会・同コース・同距離のレースで、当校は2名完走者を出していた。そこから一歩後退したとさえ言えるが、内容としてはむしろ身の詰まった、来季につながるものだったと考えている。普段からスロースターターかつ下りを課題とする南山(3年)が後半までしっかり残っていたり、1年生もそれぞれに健闘し、特に吉村(1年)が後半まで集団に食らい付いていたことは評価できよう。(なお昨年は完走率45%で、難易度的にも今年のほうが厳しかった)

下図は、トラックとロードを合計した総合対抗得点の、当校の近年推移である。

最近5年間の当校総合得点・順位の推移

2023年に22点を獲得したが、それでも総合9位で入賞にはあと一歩届かなかった。その年をピークに直近2年間はまた元の「トラックでかろうじて1~2種目引っ掛かった」という水準に甘んじている。選手があっという間に4年間を終えて卒業していってしまう入れ替わりの早い学生競技において、戦績の安定的な維持は、特にリクルーティング力を持たない当校のようなチームにとって大きな課題である。

1902年(明治35年)に設立された、現存する日本最古の自転車競技チームである当部は、2027年(令和9年)に創部125周年の記念すべき年を迎える。今後2年間は、その2027シーズンに輝かしい戦績(具体的にはインカレ総合入賞や早慶戦勝利、ということになるだろうか)を収めるべく、強化を図っていくことが至上命題となる。そこに向けたロードマップは現役諸君とまた議論・策定し実行していくが、上述した「死の谷」を超えるには心肺機能の強化が絶対条件であり、既に20歳前後となった諸君に残された時間は決して長くない。2027年への「中間地点」である来年のインカレを目指して既に始まっている新チームの練習が、一層厳しい内容になっていることを期待する。

試合後の集合写真(Photo by 深井文浩様)

(2025/9/17)