総監督ノート

~学生自転車競技のコーチングメモ~

インカレ2023総括① トラック戦評

今年もまた、学生自転車選手にとって年間最高峰の目標となる大会、全日本大学対抗選手権(インカレ)がやって来た。今回はトラックレースを8月25日(金)~27日(日)の3日間、TIP STAR DOME CHIBA(千葉市)にて、ロードレースを9月3日(日)に長野県大町市にて、それぞれ開催されることとなった。
本稿では終わったばかりのトラック大会を速報的に総括し、今週末のロードレースを展望することとしたい。

<目次>
 ● 千葉ドームでの初開催は盛況
 ● トラックレース各種目戦評
 ● トラック総合順位とロードレース展望

千葉ドームでの初開催は盛況

トラックレース開催地となった千葉JPFドーム(現呼称:TIP STAR DOME CHIBA)は、旧千葉競輪場跡地に2年前に竣工されたばかりの、ピカピカのアリーナである。都心から電車でも車でも一時間ほどで来られ、空調の効いた快適な観客席で、周長250m木製バンクのスピード感ある自転車競技を間近で観られる。
インカレひいては学連大会全般として恐らく初めての観戦有料制(500円/人)としたにも関わらず、観客席は選手の家族・友人や各校OB・OGが会期を通じ多数来訪されていた。我が慶應義塾も、ちょうど本大会の直前に甲子園で慶應高校野球部が優勝し、愛校心に火がついた?こともあってか、多くのOB・OGが遠路からも駆け付けてくださった。差し入れなどを多数頂戴し、この場を借りて御礼申し上げたい。

一見すると海外のバンクのよう(筆者撮影)

今回の大会が一定の成功を見れば、今後のインカレも本競技場が良いのではないかとの話も学連内では出ているようだ。施設保有者のJPF様や地元千葉市様がアマチュア競技に理解を示してくださっているお蔭でもある。
今大会でやや落車件数の多かったことは気になった(実際の競輪で使われるため、バンクに傷を付けて安全性・公正性に影響を与えてはいけない)が、それが学生選手のスキル向上によって改善されることを前提に、今大会は総じて成功だったと言えるのではないだろうか。

トラックレース各種目戦評

当校の今年度インカレの目標は「学校対抗総合入賞(=8位まで)」である。これは昨年度も立てていた目標だったが、昨季は大会直前に部内でコロナ感染が発生したこともあって目標には遠く及ばず、そのリベンジを期しての今季だった。
例年通り、我が部員諸君の力量と各種目に求められる能力とを照らし、どの種目に誰が出て、それぞれ何位(=対抗得点何点)を目標としていくか、事前に監督を含む部全体で議論を詰めた。今年は現四年生が戦力の中心となりチーム全体の経験値も高かったため、より具体的・現実的かつ意欲的に目標設定が出来たのではないかと考えている。

また、昨年は夏季に前述のコロナをはじめ様々な故障・落車・体調不良が相次ぎ、戦闘態勢をやや崩してしまった感もあったが、今年はそのようなことが少なく済んだ。主力の四年生が就職活動による春先の練習量低下(ただしこれも四年生諸君の自覚と努力で例年に比べ少なく留まった)をリカバリー出来れば、当部史上最も充実したレベルの戦力でインカレに臨めるものと期待された。

以下、出場した各種目の戦績と短評を種目実施順に列記していこう。

4kmチームパーシュート(団体追抜)

当校結果:5位入賞 4分17秒477(平均時速55.9km/h)
(予選1位タイム:4分07秒242、同58.2km/h)

疾走する当校チーム(前から、西村・川野・佐藤岳・山田)
(Photo by Takayanagi)

チームの総合力を端的に表すこの看板種目、我々は8位入賞ラインを4分15秒未満と想定し、その実現に向けて3月以降繰り返し千葉や伊豆の250mバンク、あるいは松本の333mバンクに通って練習を積み重ねた(OB・OG会の支援によりその利用料を賄うことが出来た謝意を申し添えたい)。
当部の良さである学年を超えたチームワーク、何でも言い合える関係性の上で、スタート、並び順、先頭を引く距離、ギア選択等を詰めていった。その過程では、「現状の4名の実力100%ベースで考えず、120%にストレッチしていく」ことを監督として求めた。

結果として15秒切りには届かなかったが、昨年の23秒からは約6秒(平均時速換算約1.3km/h)の短縮で、慶應記録(それまでは2021年に出した4分23秒265)の大幅更新となった。今回走った4名はいずれも1kmTTで1分6~7秒を出す実力を持つ。この水準で4名の脚が揃うことは120余年の歴史を経た当部でも初めてのことで、また今後もそうそう実現出来ないであろう。
そして順位としては、有力校が相次いで隊列崩壊や機材不良で脱落してしまったこともあり、5位入賞=対抗得点6点という堂々たる戦績を得ることが出来た。本大会最初のプログラムであったこの種目で、甲子園からの追い風が千葉まで吹いて来ているかのような感覚であった。

昨年の本大会では「安全な走りで8位確保」したことも価値があったが、今大会での「狙って攻めて5位」には、さらに高い価値がある。今回メンバー(山田・西村・川野・佐藤岳、以上走順)には賛辞を贈りたい。
来季はこのうち3名の四年生が抜け、全く新たなチーム編成となる。個々の持ちタイムを今年レベルまで引き上げていくことも必要だが、今季チームでもなお成長余地ありと思われた先頭交代や車間詰めなどの技術でそれらを補い、さらなる記録向上を目指したい。

スプリント予選(200mタイムアタック

当校結果:16位 11秒088
(1位タイム:10秒183、8位タイム:10秒738)

スプリントに関しては近年レベルが高まっており、1/4決勝への通過ライン(8位)を10秒5と想定していた。そして当校でこのタイムをコンスタントに出せる選手はいなかったため、エントリーそのものを逡巡していたが、山田(政3)が練習で一度このタイムを出していたこともあり、可能性に期待して出場した。

実際には、千葉ドームバンクでの事前練習で10秒8までしか出せておらず、本番ではその実力さえ発揮出来ず終わってしまった。昨年と同様の反省になるが、やはりタイム種目はその再現性が重要である。

タンデムスプリント(二人乗り)

当校結果:7位入賞 予選タイム 13秒673/250m、1/4決勝敗退
(予選1位タイム 12秒897/250m)

タンデム1/4決勝、先行で粘る当校(前:吉田智、後:平井)
(Photo by Roku)

パラリンピックを除くと、もはや世界中で日本の学生競技でしか実施されていないであろうタンデム競技。しかしインカレで総合を狙うには外せない種目であり、練習如何では上位も目指せる種目。昨年はコロナで不出場に甘んじたこの競技の火を絶やさぬよう、今年も吉田智(理工4)・平井(経2)の新ペアを組んで臨んだ。

必ずしも十分な練習量を早くから積めていたわけではないが、予選(8位)通過タイム=13秒5と想定し、とにかくそれを出せるまで、ひたすらフライングラップ(バンク上段から助走を付けてダッシュすること)の練習を繰り返した。当初「出せたらいいな」程度だったモチベーションも、次第に「出すのだ」「出せるかも」に変わっていった。
その過程では、本人達による走行技術・ギア選択・ポジション・クランク角度等の研究に加え、マネージャー陣によるビデオ撮影等の献身的サポートや、卒業したタンデム経験者OBからのアドバイス等も糧となった。目標は予選8位までに入り対抗得点1点を獲得することであったが、果たして7位通過=2点を確定することが出来たのは殊勲だった。

そうなると欲が出るもので、1/4決勝の一本勝負を何とかして勝ち抜け、4位以上を目指したかったが、対戦の練習は文字通り「ゼロ」であったので、そうは問屋が卸さない。
予選2位の強豪・日大ペアを相手に、絶対先行戦略を貫くことは出来たものの、相手を十分引き離すまでには至らず、脚の違いからラスト1周で捲られ競技を終えた。ほぼ勝負が決してからも、最後ゴールラインを切るまで全力で踏み続けた二人の姿は清々しかった。

本種目で当校は近年、「出ることは出るが、予選敗退」が続いていただけに、今回の入賞・本選進出には大いに価値がある。この経験を来季も残る平井が温め、また新ペアを組んで今度は本戦での勝利を目指し進化して欲しい。

4kmインディヴィデュアルパーシュート(個人追抜)

当校結果:9位 4分40秒907
(予選1位タイム:4分21秒682、8位タイム:4分38秒256)

昨年のインカレでは4位入賞の実績を持つ主将・佐藤岳(政4)が、3年連続で当校代表として出場した。今年はそれを上回る3位・表彰台を目標とすることは本人としても当然であり、それに向けたモチベーションも高かったはずだ。
しかし、高い心肺機能とそれを維持・向上するための練習量が必要な本種目において、春先の乗り込みが必ずしも十分でない四年生としてのビハインド、及び7月に体調を崩し2週間ほど練習出来ずフィットネスを落としてしまったことの影響が、最後まで尾を引いた感があった。あるいは、今季に入り東日本や全日本学生選手権で、他校選手のタイムが想定以上に迫って来て思うような順位が取れなかった焦燥感もあったのかもしれない。
結果は入賞へわずかに届かない9位となった。

佐藤選手の2年次からの主要大会(東日本学生・全日本学生・インカレ)における本種目タイムを時系列に並べたものが下図である。

4kmIP(佐藤岳)過去3年主要大会のタイム推移

大会によってバンクや気象条件がまちまちなので単純比較は出来ないものの、こうして見ると、昨季~今季にかけて、4分34秒~38秒のゾーン(今大会の入賞圏内)で安定的に結果を出せていたものが、今回はその本来の力を出し切れるコンディションになかったものと思われた。
また、4分34秒をベストとして、30秒切りといったさらなる成長、プラトー打破をさせられなかったのは、指導者としての僕の力量不足でもあると反省している。本種目に限らないが、学連入賞レベルに到達した選手のさらなるストレッチ環境をどう整えられるか、チームとしての継続課題と改めて認識させられることとなった。

1kmタイムトライアル

当校結果:12位 1分05秒699
(1位タイム:1分01秒514、8位タイム:1分05秒062)

本種目もスプリントと同様にレベルが高く、8位入賞ラインは1分04秒台と想定していた。この種目のスペシャリストがいない当校として、エントリー是非を迷ったもう一つの種目であったが、川野(経4)が直前の記録会で1分06秒台を出し、ワンチャンスに期待してエントリーを決めた。
コンディションを合わせて臨んだ本大会では、自己ベストかつ慶應記録(それまでは2015年・池邉の1分06秒520)となるタイムを出すことが出来たが、それでも順位は12位となった。

本来は中長距離選手である川野がこの種目に挑み、8位入賞まであと0.7秒ほどに迫ったことは、この後出場するオムニアム(トラック中距離)での活躍を予感させるものであった。またロードで活躍するにも一定以上のスピード力が必要となることを、当部部員へ改めて知らしめるものともなったであろう。

チームスプリント

当校結果:10位 48秒913
(予選1位タイム:45秒164、8位タイム:48秒144)

願わくば屈強なスプリンターを3人揃えたいこの種目だが、当校はそこまで短距離選手の層が厚くないため、1走吉田智・2走山田に加え、3走に中長距離だがスプリント力もあり、高校時代にこの種目でインターハイに出場した経験を持つ西村(経4)を入れて編成した。
このメンバーでも事前練習では入賞圏内を十分狙えるタイムが出ていたので、むしろチームパーシュートよりも対抗得点を確保出来るものと想定していた。しかし本番では思っていたほどタイムが伸びず、逆に他校はミスなく良いタイムを重ねていき、当校は入賞を逃す結果となった。

当校と競合他校との、1周毎のラップタイムを比較したのが下表である(2チーム同時発走のため全部のチームのタイムは手元で取れず、7位校と比較している。なお8位は7位+0.1秒)。

当校及び他校のラップタイム(筆者手動計時)

これを見ると、スタートの1周目で7位チームに比し約1秒ほどロスしているのが、入賞かどうかを分けたものと考えられた。1走の吉田智はチームの中ではスタンディングスタートに定評があり、当校の主な課題はそのスピードに2走3走が付いて行けるかどうか、であったので、やや予想外の結果であった。もちろん、団体種目であるので彼を責めることではなく、また誰もミスなどしていないので、これが当校の実力として甘受するのみだ。

ひとつ気になったとすれば、後述するケイリンにも共通するのだが、ウォーミングアップをバンク実走せずにローラー(特に固定ローラー)だけで済ませることが、本当に良いのかという点だ。当校に限らずそのような選手は珍しくないが、固定ローラーの場合、心肺機能や筋肉に刺激は入れられるものの、神経系を正しく起動させることは恐らく難しい。中距離種目ならレース序盤で感覚を整える時間もあろうが、短距離種目では「人車一体」にならないまま実力を発揮し切れず終わってしまう可能性もあるだろう。
もっとも、レース直前に僕は直接「身体動いているか?」と吉田智に尋ね、「とても調子良いです!」と返って来たので、上記は杞憂かもしれない。
いずれにしてもアップの仕方には個人差があって完全な正解はないし、近年はパワー管理トレーニングの浸透もあってそのようなスキル面をあまり気にせず力で押し切るタイプの選手が増えているのかもしれないが、部員諸君はそれぞれ試行錯誤して、各自の最適なルーティンを見付けて欲しい。

ケイリン

当校結果:7位入賞

7位-12位決定戦 会心のガッツポーズで先頭ゴールする当校・山田
(Photo by Roku)

トラック・ロードとも万能選手の山田(政3)が、昨秋から本命種目として取り組んでいるケイリン。約1年間で場数もある程度踏み、本大会決勝進出を目指して臨んだ。

一回戦(2名上がり)では後方から積極的にポジションを上げて行ったのは良かったが、ラスト2周からのモガキ合いで今一つ身体の動きが悪いように見え、先行2名を捲れないまま3着で敗者復活戦に回った。一回戦から決勝まで同日内で実施されるケイリンは、出来るだけ脚を温存しながら勝ち進みたいので、この結果に山田自身大いに落胆していたようだ。ただしこの直後にチームスプリントが控えていたため、一旦はそちらへ気持ちを切り替えることとした。

敗者復活戦は3名(という少ない人数)での組合せとなったが、これを落とすわけにはいかないので、積極的に自身から先行し結果的には余裕をもって通過した。
三戦目となる準決勝(3名上がり)は、最も激戦となる段階。先行タイプの有力選手をあえて前に入れるなど作戦的にやれることはやったが、ゴール勝負で一歩及ばず4着、決勝進出を果たすことは叶わなかった。

入賞を懸けての7位-12位決定戦。この日の四戦の中で、このラウンドが最も会心の走りではなかっただろうか。残り2.5周での後方からの動きに惑わされることなく、有力先行選手の直後ポジションを冷静に確保。さらにラスト1周からは自らダンシングで前に出ると、後続を引き離して見事1着でゴール。スタンドではOB・OGがスタンディングオベーションをしていた(僕のその一人だ)ほどの美しい勝ちっぷりだった。7位=対抗得点2点の獲得は、目標にあと1つ及ばなかったものの、しっかりと総合争いに貢献してくれた。

この日の山田は、ケイリンとチームスプリントのそれぞれで、思ったような走りが出来たり出来なかったりと、感情の起伏の激しい一日となった。スポーツ心理学では「良い集中、悪い集中」「狭い集中、広い集中」などと言うが、リラックスしつつ必要な力が入る、広い視野が持てている、ワクワクする、といった感覚を伴う良好な集中状態を意識的に作れることが大切。最後の7位-12位決定戦における山田は、まさにこの「ゾーン」に入ったベストパフォーマンスを発揮していたと思う。この時のメンタルコンディションをいつでも再現出来るようになれば、戦績が高いレベルで安定していくことだろう。

オムニアム(四種競技)

当校結果:6位入賞

オムニアムを走る当校・川野(中央・白いヘルメット)
(Photo by Roku)

20名前後の選手が、10km~25kmの中距離種目4つを1日のうちに走り、その総合順位(ポイント累計)で競う種目。競技としての負荷が高いため、個人種目の中で唯一、団体種目と同じ対抗得点が付与される重要種目で、各校ともエースを投入して来る。当校も、本種目で1年次に6位入賞した実績のある川野(経4)を満を持してエントリーした。

予選を楽々と通過して迎えた決勝。スクラッチ、テンポ、エリミネーションの3種目をいずれも、冷静な戦況判断と攻める時は攻めるメリハリのついた走りでコンスタントに上位を維持したのは流石であった。特にエリミネーション(2周毎に最後尾の選手を除外していき、最後まで残った者が勝つサバイバルレース)ではラスト3名までに残る粘りの走りで強さを見せつけた。

3種目終了時点で総合3位の好ポジションにつけ、最終種目のポイントレースを迎えた。試合後のミーティングで本人いわく、「自分でも予想外の順位となり、混乱してしまった」。それまでの積極的な走りを繰り出すチャンスにやや恵まれなかったレース展開もあるが、下位の選手が次々と1周ラップ(追い付き)等で大量得点を獲得していく中で、わずか1点を拾うに留まり、最終順位を6位として終了した。
下図は4種目それぞれで獲得した点数を積み上げグラフにしたものだが、上記の得点の様子が端的に見えて来る。

オムニアム 4種目の得点構成(上位8名)

オムニアムの最終局面によくある光景だが、1位と2位の選手がお互いをマークし合いながらポイント獲得を牽制し、その隙に下位の選手がポイントを稼いでいく。当校も本来はチャレンジャーとして後者であるべきだったが、3位という思いがけない上位ポジションを得たことで、ある種精神的に守りに入り、1位2位のお見合いに付き合ってしまう形となってしまったのかもしれない。ただし、逃げを決めた選手達の走りのキレ、一瞬のうちに集団を離してしまうタイミングの読みはそれぞれ素晴らしく、彼らを称賛したい。

ともあれ、本種目における6位入賞=4点獲得は、当初目標設定通りであり、チーム戦績に確実な貢献をしてくれた。

マディソン(30km)

当校結果:予選5位通過、決勝中盤DNF

今年こそは、と臨んだマディソンだったが、当校には鬼門なのだろうか。
2名1組で交互にタッチしながら、常に高速を維持してポイントレースを争うこの種目は、高い瞬発力とその反復力、タッチやめまぐるしいレース展開に対応するスキル、といった競技者としての総合力が必要となる。
オムニアムと同様、各校がエース級2名を組み合わせて取り組む、最終日の花形種目のひとつだ。当校も昨年に引き続き、佐藤岳(政4)・西村(経4)の四年生ペアで挑んだ。

予選は10kmという短い距離のポイントレース形式で、当校は初回のポイントで3点を取っていたのが幸いしギリギリ5位で決勝へ駒を進めた。ただし中盤以降は短距離がゆえの速い展開に苦しみ、集団からやや切れてそれを追い掛けることに脚を使ってしまういつもの悪いパターンに陥りかけていた。

決勝は10チームでの争いとなったが、30kmという距離にもかかわらず、巡航速度が予選と変わらないかそれ以上の展開。当校ペアも序盤は積極的に前方で展開し2回目のポイントに絡むなど、期待を感じさせた。しかしフルスピードが全く落ちない展開に次第にキツくなり、中盤でマイナス2ラップとなったところでDNF(途中除外)となってしまった。

優勝した鹿屋体育大学の選手は、30kmのラストのゴール勝負でも200mを手元計時で11秒0(多少誤差があったかもしれず、10秒台の可能性もある)で駆け抜けた。この驚異的なスピードとスタミナが、我々にはまだまだ不足していたということに尽きる。全力を出し切ってくれた当校ペアの二人はチーム内では相当に強いが、そのさらに上を目指す必要があることを、残された三年生以下の諸君は肌身で感じたことだろう。

トラック総合順位とロードレース展望

トラック競技3日間が終了したところで、当校は団体・個人併せて計4種目で入賞し、対抗得点14点、総合9位のポジションからロードレースに臨むこととなった。

トラック終了時点の総合得点・順位(学連コミュニケより)

この4種目入賞・2桁得点というのは、少なくとも僕が現役時代から通じてこの30年余り、記憶がない。昨年・一昨年もトラックでは2種目入賞に留まっており、当校としては大きな躍進と言えよう。試合後のミーティングで高橋部長先生が仰っていたように、この戦果に選手諸君は胸を張って良い。
事前の目標設定では、今回入賞出来なかった種目でも少しずつ得点を稼ぎトラックで24点を目指していた。現役諸君にはやや失礼ながら、監督としては実現確度50%ほどのストレッチ目標と考えていたから、達成率58%(=14÷24)は上出来だ。

しかし、目標とするインカレ総合入賞には、例年25点前後が必要となっている。今年も同様だとすれば、次週のロードレースで10点以上の対抗得点を稼がねばならない。これは10位以内に2名、あるいは15位以内に3名が入るような状態を指す。昨年度、9年ぶりにロード完走者を1名出し11位=2点を獲得した、というレベルの当校にとってはかなり飛躍的な戦績が求められることとなるが、現役諸君は十分射程内と考えているようだ。

トラック終了時点で同点7位の2校を追い越し、また1点差の10位で「早慶戦」を演じている宿敵・早稲田を引き離す。信州・大町美麻の山岳コースで174km(およそ5時間)というサバイバルなコースレイアウトは、当校大逆転の舞台に相応しいものとなるだろう。出走する6名の諸君が万全のコンディションで臨み、120%の力を発揮してくれることに期待している。

(2023/8/30)